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アリュージョニストっぽい吹奏楽曲

アリュージョニストっぽい吹奏楽曲紹介記事です。

(これは小説家になろうで連載中の『幻想再帰のアリュージョニスト』、同作者によるライトノベル『アリス・イン・カレイドスピア』そしてそれらの作品に使われるシェアードワールドゆらぎの神話』に関する記事です。「ゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピAdvent Calender 2016」という企画に投稿するものです)

日ごろツイッターでアリュージョニストのキャラのイメソンっぽい曲を紹介しているのを見ていてすごいな、と思うと同時にいいなと思っていました。

自分もアリュージョニストっぽい曲の紹介がしたい!

ということでやります。

家にトランペットがあるからという理由で中学で吹奏楽をはじめ、社会人となった今でも一般の楽団に所属しトランペットを吹いています。下手です。

吹奏楽曲のマニアと言ってしまったらこの世にはもっと高度なマニアの方もいらっしゃるので気が引けるのですが、10年以上ほぼ吹奏楽曲と管弦楽曲ばかり聞いてきたので、その中から3つの面でアリュージョニストっぽい!とこじつけることができそうな吹奏楽曲を選んで紹介し解説します。

 

1.オカルトパンクとサイバーパンクの融合

The Machine Awakes 作曲:Steven Bryant

http://www.stevenbryant.com/music/catalog/the-machine-awakes-band-electronics

https://www.youtube.com/watch?v=0E2ErTBnrAk

安直なのですが、生楽器の演奏をオカルトパンク、電子音楽サイバーパンクと位置付け、その融合を狙った作品を紹介します。

作曲者のスティーブン・ブライアントはたびたび吹奏楽電子音楽の融合を狙った作品を書きます。この曲より『Ecstatic Waters』の方が作曲年も古く有名なのですが、今回はこちらを選びました。

曲調的にどことなく呪術っぽい始まり方をするこの曲。聞いてもらえればわかる通り1分半あたりまでは普通に吹奏楽です。その後バンド全体のクレッシェンドを境に電子音楽が侵入してきます。

クラシック音楽っぽい吹奏楽のサウンドと、近未来的な電子音楽が調和していきます。ひたすら暗く力強い上向形のロングトーン・トゥッティ……お気づきになられるかもしれないですがこの曲、かなりグレード(難易度)が低い曲です。中学生でも楽に演奏できます。

さらに、電子音楽を扱うということで、なかなかややこしい設備が必要と思いきや、この曲に関してはなんと専用のスマートフォンのアプリをダウンロードすれば音源と再生環境が整うという親切な用意がされています。後は会場のスピーカーなりにつないで音量を調整すれば演奏可能です。

つまり、この曲は可能な限り吹奏楽電子音楽の融合を体験するハードルを下げてどんな楽団でも、吹奏楽部でもチャレンジできるようにした作品なのです。なんとなくサイバーカラテっぽいですね。

 

2.音楽での「アリュージョン」

翡翠 Kingfishers Catch Fire 作曲:John Mackey

http://www.ostimusic.com/Kingfishers.php

I.Following Falls and Falls of Rain

https://www.youtube.com/watch?v=I3XVIvngc9g

II.Kingfishers catch fire

https://www.youtube.com/watch?v=SLhmHJ0LM0Y

10年も吹奏楽管弦楽の曲を聴いていると、初めて聴いたの曲でも解説を見なくてもニヤッとできることがあります。はたから見れば音楽を聴いてニヤついている危ない人です。それを実際に体験したのがこの翡翠という曲でした。

でもアリュージョニストを読んでいてもありませんか?「あ!これ『あの話』のことだ!」みたいな。進研ゼミでしょうか。

この曲のタイトル『翡翠』はヒスイではなくカワセミと呼びます。体の色が宝石のヒスイのごとく美しい青色をしています。英語ではKingfisherというのですね。魚とりの達人ですし納得というところ。

この曲はゆっくりで静かな第一楽章と、せわしなく、でもどこか切なく晴れ晴れとした第二楽章で構成されています。

第一楽章は日本語に訳された例を調べると「雨上がりに…」となります。大分わかりやすく意訳していますが、作曲者の解説に沿っているので問題ないでしょう。

第二楽章は翡翠が太陽の光に向かって飛び立っていく様子をイメージしているそうです。小さな体躯のカワセミたちが鳴きながら(鳴き声を模倣したような音も入ってますね)ぱたぱたとせわしなく羽ばたき飛んでいく情景が目に浮かぶようです。個人的には曲調も相まって『巣立ち』『卒業』のようなイメージまで喚起されます。

で、問題の「ニヤッとできる部分」なのですがこの曲のクライマックスにあります。

テンポを落として第二楽章のメインテーマが壮大に奏された後、スピードを取り戻し、やがて来る巣立ちの時を予感してか、トライアングル・グロッケン(鉄琴)・チャイムのキラキラとした音を背景にバンド全体がコードをひとつづつ吹き鳴らします。そして、最後の一音は朝日が昇るようにpからfffに向かってゆっくりとクレッシェンドしていきます……完全に『火の鳥』だこれ!

かっこいいクラシック曲として(そこそこ)有名な、ストラビンスキー作曲のバレエ音楽火の鳥」。ディズニーの「ファンタジア2000」でも使われました。大体演奏されるのは抜粋され編纂された組曲なのですが、そのクライマックスもこれと同じ……いや完全に意識して書いているのがまるわかりです。

第二楽章のタイトル、直訳すると『発火する翡翠』。これはカワセミが太陽の光をその美しい羽に受け、燃えるように輝くことを意味しています。よって日本語タイトルも「焔の如く輝き」と訳された例があります。

つまり、焔の如く輝くカワセミを燃え盛る火の鳥になぞらえて模倣しているのです。そこには確固たる『意味』が存在します。

少なくともクラシック音楽の世界では、これは盗作ではなく『オマージュ』『引用』『模倣』『パロディ』と言われます。明らかに意味を持っての模倣で、個人的にはこれが『アリュージョン』に近いと思います。

アリュージョンにの意味をデジタル大辞林で調べますと、

アリュージョン(allusion)

1 間接的な言及。ほのめかし。

2 引喩(いんゆ)。

と出てきます。つまり『っぽい』ものを提示したうえで、それがどうだと言及するっぽいです(間違っていたらすみません)。厳密にいうと参照元に作用するのが正しいと思うのですが、この『意味を持った模倣』は参照先に意味を与えます。そこが若干違うところ。ただ、『意味を持って模倣する』つまり「これはあの話だな」と分かり、ニヤッとできる。そういうところがアリュージョンっぽいなと思います。アリュージョンって難しいですね。

ちなみにこれを思いつくに至ったのには、映画「シン・ゴジラ」のBGMに明らかにエヴァンゲリオンのBGMを意識したものがあるとツイッターで呟いたときに「それはアリュージョンでは」と某氏にリプライをいただいたのが大きくかかわっています。

 

3.脳内BGM

In the Spring, at the Time When Kings Go off to War

春になって、王達が戦いに出るに及んで

作曲:David R. Holsinger

https://www.youtube.com/watch?v=R2mI676DXFM

小難しいことを長々と書きましたが、最後はもう自分の中の脳内BGMです。

この曲、まずタイトルが既にアリュージョニスト4章の六王編じゃないかという感じです。元ネタは旧約聖書の歴代誌に書かれたダビデ王によるアンモンの地の侵略戦争の記述です。春になって、というのは「冬の雨季が終わり春になって大地が乾き固まることで戦いやすくなる」というところから来ているのだそうです。

曲は叩きつけるような激しい楽想から始まります。すぐにミステリアスな雰囲気になり、一部の奏者が楽器を置き「声」でのスキャット・サウンドクラスターのようなことを始めます。これが「アー」くらいならまだいいのですが「いーえーあーえーおーえー」とか「むぅぅうううみぃぃいいいいいい!!」だとか「わわわわわわわわー!」だとか何やってるんでしょうねという感じ。率直に言うと恥ずかしいです(実際に演奏した)。

それが終わるとなかなかかっこいいファンファーレ。その後リズミカルで、どことなく戦闘っぽいバーバリックな音楽が展開されます。目まぐるしく変わる曲調と変拍子。そのどれもが戦いの音楽です。

戦いの音楽、のはずなのですが……普段このホルジンガーの作品を聞きなれないともしかするとコミカルに聞こえるかもしれません。この人の作風でもあり、発声パートの恥ずかしさでもあり、でもこれ、大真面目でとても熱い音楽なんです。

曲は後半に入りしばらくすると各楽器の限界までのクレッシェンドがあり、その後フッと無音になります。ここからがクライマックスだ……。

キラキラした、しかしどことなく薄暗い打楽器の音の上に緊張を煽るようなチャイムの音。そして「発声」。今までの変な声に加えて「エリャーアエアートゥエアーシャウンアートゥエアー」などと意味のよく分からない呪文のような歌詞のパートも加わり、いよいよ儀式めいてきます。

その後ホルン・ユーフォニアムがやさしくも決然としたテーマを奏で始めます。ゆっくり、ゆっくりと音楽が再生していき盛大なクライマックスが、始まります。それまでに出たメロディがまるでパズルのピースのように、物語の伏線を回収するように次々と登場し、圧倒的な音の濁流、クライマックスに次ぐクライマックス。ホルンの咆哮が突撃を合図し最高速度で現れる前半のファンファーレ!

最初はコミカルでギャグかな?と思っていたものが完全に大真面目な感動に変わります。私は同じものをアリュージョニストを読んでいて感じ、そこに抗いがたい魅力を感じるのです。

まだ見ぬ4章の結末、それが盛大に締めくくられたのなら、読んでいてきっとこういう音楽が頭に流れそうだな、と思います。どうなるんでしょうねほんと。楽しみです。

 

まだまだたくさんたくさん、曲の名前を並べたいのですが今回はここまでにします。

長々とお付き合い頂き有難うございました。

 

補足:ライブエレクトロニクスは生の楽器の音を拾い、それにエフェクトをかけてリアルタイムで演奏に反映させる技術だそうです。より意味として正しいて電子音楽に書き換えました。