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この記事はコミックマーケットC97 1日目 南ユ 36b サークル「魔王14歳の幸福な電波」で頒布された、小説家になろうで連載中の作品「幻想再帰のアリュージョニスト」の二次創作合同同人誌「あつまれ!妄想妖精」に寄稿した、架空の交響曲の紹介文「交響曲(2139)」において、描写をオマージュした楽曲や、インスピレーションのもととなった楽曲を紹介する記事です。
未読の方は、Boothで通販して頂いていますので、ぜひご購入ください。
読んでくださった方で、「元ネタ」が気になるという人向けに記事を書きました。
興味を持ってくださってありがとうございます。
あくまでも「発想の元」という感じで、私の頭の中でも同じ要素を持つけどぜんぜん違う曲調で想像していたりなどあります。なのでみなさんがこの記事を見る前に想像していた音楽を否定するつもりはなく、どちらかというと皆さんの脳内で流れた音楽こそが正しい、みたいなところがあります。ほーんそういうのもあるのねという感じで参考にしていただけたらと思います。
作曲者について
アンサンブル・ヌーボー…管楽合奏と電子オルガンによる新しい合奏形態。洗足学園音楽大学で発足した。
第1楽章
全楽器の咆哮…ベルト・アッペルモント/ビッグ・バン
幻想的で煌めくアトモスフィア…ジョン・マッキー/セイクリッド・スペーシズ
※他にもジョン・マッキーの「オーロラ・アウェイクス」や「フローズン・カテドラル」など、キラキラした作風の曲があります。
二つの主題が完全な形で同時に演奏される…グスタヴ・ホルスト/ミリタリー・バンドのための第1組曲、第3楽章「行進曲」
トゥッティによる倍全音符で幕切れ。Dの音がデクレッシェンドしていき彼方に消えいる。…アントニン・ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」第4楽章 終結(「新世界より」では、Dではなく、Eの音)
ネクサス・システム(空間内の全ての人間の脳波を読み取る)…ラメズ・ナム「ネクサス」(SF小説)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B075GP4QKS/
第2楽章
オフ・ステージ(舞台裏)のアルト・サクソフォンの無からクレッシェンドしてきたような延ばしの一音…エドワード・グレッグソン/サクソフォーン協奏曲 冒頭
フレーズの所々で「異音」が混ざる…フランティシェク・シュテルバーク/3つのソネット No.2「夜のソネット」
昔を懐かしむような暖かな音楽…エドワード・エルガー/エニグマ変奏曲より「ニムロッド」
第3楽章
電子オルガンによる四重奏…トビー・フォックス/メガロ・ストライク・バック
再現可能か怪しい高速のタンギングを駆使し、義腕・義手は高速のフィンガリング・スライディング…ピーター・グラハム/トライアンフ・オブ・タイム
第4楽章
奏者は楽器を置いて呟き始める…ピーター・グラハム/交響的情景「地底旅行」中間部…動画(リンク先の動画自体が楽曲の後半)の3分30秒あたり
グランカッサの音量が急激に膨らみ~スネアドラムとトロンボーンによる何かを予期させる速い音楽…エドワード・グレッグソン/剣と王冠 第3楽章「戦いの音楽と讃歌」 リンク先の動画の11分34秒あたりからが3楽章
変拍子によるバーバリックな音楽…デヴィッド・R.ホルジンガー/春に 王たちが戦いに行くに及んで
チェロ・コントラバス奏者たちが楽器本体をカホンのごとく叩いたかと…クリスチャン・ジャンテ/Bass, Bass, Bass, Bass, Bass & Bass
音量の限界かというほどの鋭い一音のあと禍々しい舞曲…イーゴリ・ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」より、カスチェイ王の凶悪な踊り
弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器がそれぞれ順にフィーチャーされ…ベンジャミン・ブリテン/青少年のための管弦楽入門
木管楽器群と電子オルガンはまるで沢山の鳥がさえずるように…吉松隆/祝典序曲「鳥たちへのファンファーレ」
※鳥の声を模した音は他の吉松隆の楽曲にも登場する
まるで、雲の切れ間から光が差すように~終わりまで…イーゴリ・ストラヴィンスキー/バレエ音楽「火の鳥」より、終曲(カスチェイの城と魔法の消滅、石にされていた騎士たちの復活、大団円)
形式…基本的な交響曲の形式。特に、ベートーヴェンの交響曲第9番や、ドヴォルザークの交響曲第9番、そして吉松隆の交響曲第5番。
交響曲のテーマ…失われし世界の再演呪術。
失われたもののための交響曲として、インスピレーションを受けた交響曲。
ジェイムズ・バーンズ/交響曲第3番
寝たきりでも電子書籍が読みたい!
スマホで電子書籍を読んでいて、一々画面に触れなければいけないのが地味に辛いと感じる時があります。
例えば寝てる顔の前にアームを使ってiPhoneを固定している時だと微妙に腕を持ち上げる形になり、つらい。そして画面に触れるとボヨヨヨンと振動する。さらに冬だと手を出すのも寒い。布団の中で手をぬくぬくしたまま電子書籍のページをめくりたい…
将来寝たきりになったときにも大好きな本を読みたくないですか?今回の話はそういった対処にもなりえます。私はおじいちゃんになってもラノベを読みたいので今のうちにその手段を用意しておくことにします。
↑AFUNTAイノベーション版 フレキシブルアームホルダー スタンドの通用版です。石川博品「ノースサウス」です。通販でこの同人誌を買うと電子書籍を無料でダウンロード出来ます。オススメです。ワンダースワンです。ソフトはデジモンアノードテイマーです。きったねえ枕だなぁおい。
ここ数ヶ月いろんなサイトを拝見してBluetoothなどの遠隔操作で電子書籍のページがめくれないか試してました。しかしなかなか詳しく説明してるところがない。
一部の電子書籍アプリではBluetoothキーボードに対応して左右キーでページ送りが出来るものの、現状ほとんどのアプリでは未対応です。
しかし対応してないアプリでもBluetoothデバイスを使ってページをめくる方法があります。ありますよ。
脱獄もしません。iPhoneにそもそもある「スイッチコントロール」という機能を使うのです。
設定は大変ですが、一度設定するとたいへん便利ですよ。
ちなみに私のiPhoneは6で、iOSのバージョンは9.3.4です。7に変えたりiOS10にする勇気は今の所ない。勘弁してください。
0.スイッチコントロールで使えるBluetoothデバイスを買おう!
手元にBluetoothキーボードがあれば使えるか試して下さい。具体的には下の「2.スイッチを登録しよう! 」で外部スイッチとして登録出来るかどうか、です。
私の持っていたBluetoothキーボードは使えませんでしたので、梅田のヨドバシカメラの店員さんにスイッチコントロールのことを熱く語って引かせました。
いえ、そうではなく店頭にあったVR用コントローラーが今回の「スイッチコントロール」という機能でも使えるのかどうかと尋ねたのですが、なにせマイナーな機能なので把握している方がいないようで、どうするかなと見ているとなんと実際に箱から出して電池を入れて使えるか確認させて頂けました。神対応です。
そのコントローラーがこちらです。
エレコムのJC-VRR01
これの「ゲームパッドモード」でスイッチコントロールが使えるのです。
ただしスティックの向こう側にあるトリガー的な二つのスイッチだけは使えませんでした。
スティックは上下左右の四方向でそれぞれ一つのスイッチとして使えます。
『iOSのゲームパッドモードではiCade互換の信号が出力されます』とのこと。iCadeが何かわかりませんがこれが重要なんでしょうか。iOS9.3.4では使えています。
1.スイッチコントロールを使えるようにしよう!
設定>一般>アクセシビリティ>ショートカット
ここではホームボタンをトリプルクリックする事で出てくるメニュー、その項目を設定できます。
「スイッチコントロール」にチェックを入れてください。既にチェックされていたら大丈夫です。
2.スイッチを登録しよう!
まず、BluetoothデバイスをiPhoneと繋いで(ペアリングして)下さい。
具体的には
設定>Bluetooth
でONにします。
Bluetoothデバイスの電源をONにしてそれらしきデバイスが検知・表示されるのを待ちます。一覧に表示されたらタップして繋ぎましょう。キーボードだと数字を打ち込んでエンターみたいな感じじゃないでしょうか。
本題のスイッチの登録です。
設定>一般>アクセシビリティ>スイッチコントロール>スイッチ>新しいスイッチを追加…
ここで「外部」を選択してください。
そして繋いだBluetoothデバイスの、使いたいキーやボタンひとつを押します。エンターでもスペースでも。
するとスイッチの名前を登録する画面が出てきますので、どのキーやボタンなのかしっかりわかるような名前を付けてください。ここで適当につけると後でなんだったかわからなくなり困ります。私は困りました。
名前の登録が済むと、今度はスイッチに対してアクションを選択しろとのことです。
このアクション、今回「レシピ」を使う上では関係ないです。無難に「ハイライトを停止」で良いでしょう。
↑試行錯誤をした跡が窺えます。ホームボタン機能などはレシピ使用中には使えなかったので、意味がありませんでした。
3.レシピを作ろう!
設定>一般>アクセシビリティ>スイッチコントロール>レシピ
ここにデフォルトで「ページ移動」というレシピが存在しています。それを使いましょう。タップしてください。
すると一番下に「タイムアウト」という項目がありますがそれはオフにしておいてください。
では、「スイッチを割り当てる…」をタップ。すると先ほど登録したスイッチが並んでいます。そのうちひとつをタップ。
するとこんな画面。
画面の中央はそのまま画面の中央をタップする動作です。
「左/右から右/左にスワイプ」でもページめくりは可能なのですが、これだとページめくりがぬるっと動く気持ち悪いものになるので、今回は「カスタムジェスチャ」を使いましょう。
カスタムジェスチャの登録
あなたの使いたい電子書籍のアプリは、どのようにしてページをめくりますか?
私の使っているものだと大体画面の右/左側をタップするとページがめくれます。
同じように画面にタップしましょう。そして保存。
はい、これでレシピはOKです。
ちなみに「ラノベル」という、「小説家になろう」に特化したビュワーアプリだと、画面のどこをタップしても一様にページが進んでしまいます。
戻りたいときには右から左にスワイプする必要があるので、それもカスタムジェスチャに登録しています。
そしたら、スイッチを割り当てた「ページ移動」というレシピを使う設定にしましょう。
設定>一般>アクセシビリティ>スイッチコントロール>レシピ
まで戻り、下の「レシピを起動」をタップし「ページ移動」にチェックを入れてください。
これで準備はできました。
4.実際に使ってみよう!
Bluetoothデバイスをちゃんと繋いだ(ペアリングした)状態で、
ホームボタンをトリプルクリックしてください。
トリプルクリックが難しいのであれば、アシスティブタッチに登録するのも手ですがスイッチコントロールを使うとアシスティブタッチが消えますので、やっぱりトリプルクリックが使えた方がいいです。仇のようにカカカッとホームボタンをトリプルクリックしてください。
そして「スイッチコントロール」をタップ。すると画面中央に「スイッチは"ページ移動"レシピを使用するように設定されています。」との表示が。
この状態で電子書籍のアプリを開き、登録したBluetoothデバイスのキーを押してみてください。
いかがでしょうか、使えましたか?
カスタムジェスチャの精度が悪かったり、ジェスチャや割り当てを変更した時は一度Bluetoothデバイスの電源を切って、iOSデバイス本体のBluetoothもオフにしてやり直してみて下さい。
それでもダメな場合、カスタムジェスチャに登録した動作の問題なので、カスタムジェスチャをやり直して試行錯誤してみて下さい。
5.使い終わる時は
ホームボタントリプルクリックでメニューを出します。
「スイッチコントロール」をもう一度タップで切れます。
それか私は「アシスティブタッチ」を常用しているので、そっちをタップしても「スイッチコントロール」はオフになります。
そして、コントロールセンターを開いてBluetoothもオフにしましょう。そのままだと文字が打ち込めなくなり(キーボードが繋がれている扱いなのでそちらを優先しているようです)不便です。
電子書籍、めくれました?
これでかなり楽になりますよね。
寝た状態でiPhoneを固定するアームと併用すると抜群に快適です。
6.注意
長い間放っておいたりすると青いカーソルが画面を移動し始めていて焦ります。何がどうしたらこうなるのかよくわかりませんが、そうなった場合もホームボタントリプルクリックで一度「スイッチコントロール」を切って下さい。
これを先延ばしにする設定もあるんでしょうか?スイッチコントロールの各種項目を弄ってみて下さい。
長いことお疲れ様でした。これで終わりです。以下特に読む必要無いです。
スイッチコントロールとは?
平たく言うと画面に触れずにiPhoneを操作する機能です。料理中手が汚れている時や、障害があり画面に触れることも困難な人でもiOSデバイスが使えるように、という機能です。
例えば内カメラで顔を認識し顔を左右に動かす、というのもスイッチになりえます。新しいスイッチを追加するとき、「カメラ」を選んでみて下さい。かなりコツは要りますが上手くいけば顔を動かすだけでページがめくれます。
放っておいたら画面に青いカーソルが現れることがあると言いましたが、あれが実は究極の機能なのです。たった一つのボタンだけでiOSデバイスを操作することができます。
カーソルが自動的に画面内を移動し、使いたい項目に来たときにボタンを入力する。それの繰り返しによって操作するのです。
実はここら辺の、「障害を持っている方にもiOSデバイスが使えるように」と紹介する記事は検索すると結構充実しています。値段ははりますが、障害を持っている方用の大きなボタンやデバイスが売られていたりします。そういうところも日々進歩してるんですね。
他にも寝たきりでもっと簡単に高度な操作をする方法があります。HDMI接続で外部モニターに出力するというものです。
そのモニターをアームで固定し、手元でiOSデバイスを操作します。
そうすると難しいことを考えなくても操作できますし(寝たきりスタイルだと手元が見えませんが感覚でなんとかしましょう)操作の幅も制限されないので良いと思います。
ただ純正のライトニングーHDMIアダプターが5千円もしますし(大きなテレビ画面でゲームやYouTubeが見れるようになるので買って損は無いですが)、当然そのモニター自体も高くつきます。そして解像度が合わなければどうなるのかちょっと私にはよくわかりません。
こんな感じで、参考になれば良いなあと書きました。
正直自分がおじいちゃんになり、寝たきりになるころにはもっと便利な操作方法が確立されているんだろうなと思います。
でも今でも便利なんですよ。あと何ができるか試行錯誤するのは楽しい。そういう感覚を失わないことって大事ですよね多分。アニメ映画「老人Z」に出てくるコンピューターめっちゃ得意な元気なおじいちゃんみたいになりたい。
アリュージョニストっぽい吹奏楽曲
アリュージョニストっぽい吹奏楽曲紹介記事です。
(これは小説家になろうで連載中の『幻想再帰のアリュージョニスト』、同作者によるライトノベル『アリス・イン・カレイドスピア』そしてそれらの作品に使われるシェアードワールド『ゆらぎの神話』に関する記事です。「ゆらぎの神話・アリュージョニスト・アリスピAdvent Calender 2016」という企画に投稿するものです)
日ごろツイッターでアリュージョニストのキャラのイメソンっぽい曲を紹介しているのを見ていてすごいな、と思うと同時にいいなと思っていました。
自分もアリュージョニストっぽい曲の紹介がしたい!
ということでやります。
家にトランペットがあるからという理由で中学で吹奏楽をはじめ、社会人となった今でも一般の楽団に所属しトランペットを吹いています。下手です。
吹奏楽曲のマニアと言ってしまったらこの世にはもっと高度なマニアの方もいらっしゃるので気が引けるのですが、10年以上ほぼ吹奏楽曲と管弦楽曲ばかり聞いてきたので、その中から3つの面でアリュージョニストっぽい!とこじつけることができそうな吹奏楽曲を選んで紹介し解説します。
1.オカルトパンクとサイバーパンクの融合
The Machine Awakes 作曲:Steven Bryant
http://www.stevenbryant.com/music/catalog/the-machine-awakes-band-electronics
https://www.youtube.com/watch?v=0E2ErTBnrAk
安直なのですが、生楽器の演奏をオカルトパンク、電子音楽をサイバーパンクと位置付け、その融合を狙った作品を紹介します。
作曲者のスティーブン・ブライアントはたびたび吹奏楽と電子音楽の融合を狙った作品を書きます。この曲より『Ecstatic Waters』の方が作曲年も古く有名なのですが、今回はこちらを選びました。
曲調的にどことなく呪術っぽい始まり方をするこの曲。聞いてもらえればわかる通り1分半あたりまでは普通に吹奏楽です。その後バンド全体のクレッシェンドを境に電子音楽が侵入してきます。
クラシック音楽っぽい吹奏楽のサウンドと、近未来的な電子音楽が調和していきます。ひたすら暗く力強い上向形のロングトーン・トゥッティ……お気づきになられるかもしれないですがこの曲、かなりグレード(難易度)が低い曲です。中学生でも楽に演奏できます。
さらに、電子音楽を扱うということで、なかなかややこしい設備が必要と思いきや、この曲に関してはなんと専用のスマートフォンのアプリをダウンロードすれば音源と再生環境が整うという親切な用意がされています。後は会場のスピーカーなりにつないで音量を調整すれば演奏可能です。
つまり、この曲は可能な限り吹奏楽と電子音楽の融合を体験するハードルを下げてどんな楽団でも、吹奏楽部でもチャレンジできるようにした作品なのです。なんとなくサイバーカラテっぽいですね。
2.音楽での「アリュージョン」
翡翠 Kingfishers Catch Fire 作曲:John Mackey
http://www.ostimusic.com/Kingfishers.php
I.Following Falls and Falls of Rain
https://www.youtube.com/watch?v=I3XVIvngc9g
II.Kingfishers catch fire
https://www.youtube.com/watch?v=SLhmHJ0LM0Y
10年も吹奏楽や管弦楽の曲を聴いていると、初めて聴いたの曲でも解説を見なくてもニヤッとできることがあります。はたから見れば音楽を聴いてニヤついている危ない人です。それを実際に体験したのがこの翡翠という曲でした。
でもアリュージョニストを読んでいてもありませんか?「あ!これ『あの話』のことだ!」みたいな。進研ゼミでしょうか。
この曲のタイトル『翡翠』はヒスイではなくカワセミと呼びます。体の色が宝石のヒスイのごとく美しい青色をしています。英語ではKingfisherというのですね。魚とりの達人ですし納得というところ。
この曲はゆっくりで静かな第一楽章と、せわしなく、でもどこか切なく晴れ晴れとした第二楽章で構成されています。
第一楽章は日本語に訳された例を調べると「雨上がりに…」となります。大分わかりやすく意訳していますが、作曲者の解説に沿っているので問題ないでしょう。
第二楽章は翡翠が太陽の光に向かって飛び立っていく様子をイメージしているそうです。小さな体躯のカワセミたちが鳴きながら(鳴き声を模倣したような音も入ってますね)ぱたぱたとせわしなく羽ばたき飛んでいく情景が目に浮かぶようです。個人的には曲調も相まって『巣立ち』『卒業』のようなイメージまで喚起されます。
で、問題の「ニヤッとできる部分」なのですがこの曲のクライマックスにあります。
テンポを落として第二楽章のメインテーマが壮大に奏された後、スピードを取り戻し、やがて来る巣立ちの時を予感してか、トライアングル・グロッケン(鉄琴)・チャイムのキラキラとした音を背景にバンド全体がコードをひとつづつ吹き鳴らします。そして、最後の一音は朝日が昇るようにpからfffに向かってゆっくりとクレッシェンドしていきます……完全に『火の鳥』だこれ!
かっこいいクラシック曲として(そこそこ)有名な、ストラビンスキー作曲のバレエ音楽「火の鳥」。ディズニーの「ファンタジア2000」でも使われました。大体演奏されるのは抜粋され編纂された組曲なのですが、そのクライマックスもこれと同じ……いや完全に意識して書いているのがまるわかりです。
第二楽章のタイトル、直訳すると『発火する翡翠』。これはカワセミが太陽の光をその美しい羽に受け、燃えるように輝くことを意味しています。よって日本語タイトルも「焔の如く輝き」と訳された例があります。
つまり、焔の如く輝くカワセミを燃え盛る火の鳥になぞらえて模倣しているのです。そこには確固たる『意味』が存在します。
少なくともクラシック音楽の世界では、これは盗作ではなく『オマージュ』『引用』『模倣』『パロディ』と言われます。明らかに意味を持っての模倣で、個人的にはこれが『アリュージョン』に近いと思います。
アリュージョンにの意味をデジタル大辞林で調べますと、
アリュージョン(allusion)
1 間接的な言及。ほのめかし。
2 引喩(いんゆ)。
と出てきます。つまり『っぽい』ものを提示したうえで、それがどうだと言及するっぽいです(間違っていたらすみません)。厳密にいうと参照元に作用するのが正しいと思うのですが、この『意味を持った模倣』は参照先に意味を与えます。そこが若干違うところ。ただ、『意味を持って模倣する』つまり「これはあの話だな」と分かり、ニヤッとできる。そういうところがアリュージョンっぽいなと思います。アリュージョンって難しいですね。
ちなみにこれを思いつくに至ったのには、映画「シン・ゴジラ」のBGMに明らかにエヴァンゲリオンのBGMを意識したものがあるとツイッターで呟いたときに「それはアリュージョンでは」と某氏にリプライをいただいたのが大きくかかわっています。
3.脳内BGM
In the Spring, at the Time When Kings Go off to War
春になって、王達が戦いに出るに及んで
作曲:David R. Holsinger
https://www.youtube.com/watch?v=R2mI676DXFM
小難しいことを長々と書きましたが、最後はもう自分の中の脳内BGMです。
この曲、まずタイトルが既にアリュージョニスト4章の六王編じゃないかという感じです。元ネタは旧約聖書の歴代誌に書かれたダビデ王によるアンモンの地の侵略戦争の記述です。春になって、というのは「冬の雨季が終わり春になって大地が乾き固まることで戦いやすくなる」というところから来ているのだそうです。
曲は叩きつけるような激しい楽想から始まります。すぐにミステリアスな雰囲気になり、一部の奏者が楽器を置き「声」でのスキャット・サウンドクラスターのようなことを始めます。これが「アー」くらいならまだいいのですが「いーえーあーえーおーえー」とか「むぅぅうううみぃぃいいいいいい!!」だとか「わわわわわわわわー!」だとか何やってるんでしょうねという感じ。率直に言うと恥ずかしいです(実際に演奏した)。
それが終わるとなかなかかっこいいファンファーレ。その後リズミカルで、どことなく戦闘っぽいバーバリックな音楽が展開されます。目まぐるしく変わる曲調と変拍子。そのどれもが戦いの音楽です。
戦いの音楽、のはずなのですが……普段このホルジンガーの作品を聞きなれないともしかするとコミカルに聞こえるかもしれません。この人の作風でもあり、発声パートの恥ずかしさでもあり、でもこれ、大真面目でとても熱い音楽なんです。
曲は後半に入りしばらくすると各楽器の限界までのクレッシェンドがあり、その後フッと無音になります。ここからがクライマックスだ……。
キラキラした、しかしどことなく薄暗い打楽器の音の上に緊張を煽るようなチャイムの音。そして「発声」。今までの変な声に加えて「エリャーアエアートゥエアーシャウンアートゥエアー」などと意味のよく分からない呪文のような歌詞のパートも加わり、いよいよ儀式めいてきます。
その後ホルン・ユーフォニアムがやさしくも決然としたテーマを奏で始めます。ゆっくり、ゆっくりと音楽が再生していき盛大なクライマックスが、始まります。それまでに出たメロディがまるでパズルのピースのように、物語の伏線を回収するように次々と登場し、圧倒的な音の濁流、クライマックスに次ぐクライマックス。ホルンの咆哮が突撃を合図し最高速度で現れる前半のファンファーレ!
最初はコミカルでギャグかな?と思っていたものが完全に大真面目な感動に変わります。私は同じものをアリュージョニストを読んでいて感じ、そこに抗いがたい魅力を感じるのです。
まだ見ぬ4章の結末、それが盛大に締めくくられたのなら、読んでいてきっとこういう音楽が頭に流れそうだな、と思います。どうなるんでしょうねほんと。楽しみです。
まだまだたくさんたくさん、曲の名前を並べたいのですが今回はここまでにします。
長々とお付き合い頂き有難うございました。
補足:ライブエレクトロニクスは生の楽器の音を拾い、それにエフェクトをかけてリアルタイムで演奏に反映させる技術だそうです。より意味として正しいて電子音楽に書き換えました。
ラノベやなろう小説の異世界について
「最近のラノベやなろう小説の異世界ファンタジー世界は画一化してる論」してる人が殴り棒として持ち出してくるオリジナリティのある異世界とやらがどれもこれも生物が繁栄してる岩石の大地に人間がいる世界なので半笑いで見てます
— まいにくん (@macgalme) 2016年3月21日